| IZU AKAZAWA |
西表島が面白い。年に1度だが、この島の海をもぐるたびに不思議なサプライズにめぐりあうからである。鹿の川のマンタしかり、花吹雪のように舞う落水崎のカスミチョウチョウウオもしかり、50m以上と想像を絶する鳩間島東の透明度にも震えがくる。 そして今回のツアーでは、舟浮湾のお洒落なマンジュイシモチである。 □ ときめきのマンジュウイシモチ この歳になると胸がドキドキするようなことはめったにない。激しく気持ちを揺さぶられて、心にときめきを覚えることも残念ながらほとんどない。 マンジュウイシモチのことをマンジュウと呼ぶようになったのは何時からだったか忘れたが、ぼくがマンジュウに関心を持ったのはパラオツアーからだから、それほどの古い話ではない。パラオではじめてマンジュウを見たときのときめきは鮮烈だった。 好奇心がキノコ雲のようにもりあがって、ぼくの引出しの中の生きもの情報はたちまちブレイクしてしまった「知らなかった!こんなお洒落な奴が海の世界にいるなんて!」 身体の前後を黒帯で真っ二つに断ち切った大胆なデザインも凄いが、オフホワイトのパンツにブラウンの水玉を散らばせた奔放な配色も鮮やかである。 例えて言えば快活なベネトンカラーか、イタリアンモードもびっくりの色と柄である。そしてなによりも驚いたのは、大きな黒い瞳をかこむギョロ目の赤である。ギョロ目の赤は満月のような円ではない、両端がライトグリーンでカットされている。 ああマンジュウイシモチよ!いったいこんな赤目の魚が、他にもいるのだろうか? 尚、残念ながらパラオのマンジュウは撮っていない。実は撮れていないのである。 |
![]() Sphaeramia nematoptera マンジュウイシモチ |
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□ 写真のマンジュウは西表島の舟浮湾で撮ったものである。 サンゴ林の間を巣穴にしているデリケートで臆病な美形、とてもユニークな魚である。マンジュウを撮るには、相手の油断をひきだすかフェイントするしかない。 数撃ちゃ当たるショットの中から選んだ貴重な一枚だが、内蔵ストロボだけのDX3000では、これがギリギリの限界かもしれない。発色もイマイチである。 舟浮湾は湾奥のために時化の最中でも潜れるラッキーなポイントで、尾びれの赤いネオンテンジクダイや蛍光ブルーの瞳で人気のヒラテンジクダイもいる。稀だがニシキテグリも撮れるという。透明度は期待できないが、浅くてデジタル党には願ってもないヨダレポイントでもある。 肝心のマンジュウは水深6m、ユビエダハマサンゴを俯瞰するとチラチラしているからすぐわかる。ところが近づくとサンゴの間に頭を突っ込んだまま振り向いてくれない。このマンジュウ、実は西表島と石垣島でしか見られない稀種だと、図鑑に書いてあった。 □ デジカメ党はマンジュウ専科 大島佐喜子女史は、この島在住20年のベテラン“ダイブチームうなりざき”を率いるカリスマガイドとして知られている。カスミチョウチョウウオの小さな群れを、指示棒をキラキラさせながら寄せ集めていき、夏雲のような大きな群れに追い込むガイドは圧巻で鹿野川の「カスミを追う女」と言われ、彼女のパフォーマンスは評判である。 その大島さんが『西表にくるダイバーの見たい魚のベスト5に、マンジュウイシモチは欠かさずランクされています』と嬉しくなるようなアピールをしたのである。 ◇ ◇
二日目の3ダイブは大島さんにリクエストしてマンジュウ専科でガイドしてもらった。夢と期待に胸をふくらませたマンジュウ党は意気揚々、舟浮湾をエントリーする。視界不良、2mの砂泥地に煙幕があがる。綺麗なアマモの緑も見えなくなった。水温26°水深6m、垣根のようなユビエダハマサンゴの林にぶつかった。 シニアのマンジュウ党は、ニコン好きのOZAKIさん、DX5000のNEKO女史 デジカメ・コレクターで知られた大宮のKANNOさん、そしてぼくの4名である。 柔らかい敷布団のような砂地に膝をつき、ハマサンゴの小さな群落に両手を突きだしてモニターとにらめっこ、ひたすら真剣に同じスタイルで撮りまくっているのがおかしい。 遠近両用の水中マスクを着けてはいるが、いずれのダイバーも視力は更によくない。 ため息の泡が大きくなっているのは、実はよく見えないのである。もちろんぼくとて同じこと、瞳を凝らしてピントマークだけを頼りにカメラまかせで撮っているのである。 大島さんはぼくらの頭上でふあふあと浮かんだままガイドの仕様もない。滑走路待ちの旅客機のようにひたすら旋回するばかりである。 偶然、ニシキテグリをヒットしたのはOZAKIさんだ。 『マンジュウはだめだったけど錦を飾りましたね』と大島さんにひやかされていた。 □ 赤沢のデジカメ王、登場! 2枚の写真は赤沢のデジカメ王、大宮のKANNOさんが写したものである。実はKANNOさんは去年の西表でも同じ舟浮湾でマンジュウの撮影に成功している。フェイントが上手で執拗に撮りまくるのでパラオでもマンジュウをヒットしている。 デジカメコレクターの彼は目的に応じて20台のカメラを使い分けている。西表島ツアーではF710(FUJI)とDX5000(S&S)を使っていたが、遠近両用のソフトコンタクトで視力をカバーしていた。いずれも液晶モニターは大きく見やすいのが特徴である。 西表島ではないが慶良間の海で撮ったKANNO作品が傑作である。クマノミ、ハマクマノミ、ハナビラクマノミ、カクレクマノミ、セジロクマノミ、そしてトウアカクマノミ、日本の海にいる6種のクマノミを網羅した作品である。 赤沢のデジカメ王はこの写真が大自慢で、Tシャツに6種をプリントして着ている。 デジカメ王の悩みは、遠近用のソフトコンタクトを着けることはできるのだが、脱着するときが大変なことである。鏡を見ながら片側は取れても、残った目のほうのソフトが見えなくなり、どうにもこうにも自分では取れないのである。 KANNOさんがデジカメコレクターになった理由を、ぼくは単純に理解している。文句を言いながらも液晶モニターに満足するまでデジカメ探しをやめないからだと思う。 |
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![]() カンノ マンジュウ |
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| 海爺 2004-11-18 |