| IZU AKAZAWA |
![]() マグロ穴の景観 |
□ マグロ穴のイソマグロ(嫁島)2日目 ケータ諸島の海上に突き出た小山のような岩礁群のひとつに、まるで千貫門のような真四角な穴を開けた大きな岩礁、これがイソマグロのランデブーサイト、マグロ穴である。マグロ穴のイソマグロについてはミステリアスな話題が多い。ここはご当地のスーパーガイド、森田康弘さんのブリーフィングを聞いてもらうことにしよう。 森田さんは“小笠原ダイビングセンター”生え抜きのベテランガイドである。 |
![]() 小笠原のスーパーガイド・森田康弘さん |
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『ケータのマグロ穴に潜ってイソマグロの群れに遭遇すると、それまでに見たサプライズな生きものたちは、全て雑魚になってしまいます。だいたい小笠原の生きものたちは、チョウチョウウオにしろ、キンチャクダイにしろ、なにもかもが大振りなのが特徴ですがマグロ穴のイソマグロは特別です。 初めて小笠原を訪れるダイバーに、皆んな大きく育って数も多いねとよく言われます。小笠原好きのダイバーが、小笠原の海を大物たちの交差点と言うのはほんとなのです。何回潜ってもケータのマグロ穴では、超弩級のイソマグロ群団に圧倒されます。 穴のボトムは複雑ですが水深10mちょっと、イソマグロはダイバーの泡を嫌うので穴の壁際を進んでください。中間点まで進んだら身体をしっかり確保して、空を見あげてください。イソマグロは正面から向かってきます。3〜40匹が穴に入ってきてぐるぐると回遊します。ほんとに他の魚たちが猫またぎになりますから不思議です。 どうしてこの穴にとびこんでくるのか謎ですが、この辺りがランデブーサイトという説もあります。先頭を走るでかくて太っているのがメスです。スリムなのがオスのイソマグロたちでメスの回りを群がり、体をこすりあうのが求愛行動だと私は思っています』 森田さんはポイントマップをマジックボードに描きながら、怖いもの無しの我が好奇心チームを一気に集中させてしまった。さすがベテラガイドのブリーフィングである。 ぼくにとって、イソマグロは印象の薄い魚である。数えきれないほどイソマグロを見ているのに興奮したことはない。写真を撮ってもビデオを追いかけてもろくな映像はない。だいたい落ち着きのないじっとできない奴等だから、視界に入ってもすぐに消えてしまう。それも3〜4匹で、けして寄ってくることはないからイメージできないのである。 ところがマグロ穴のイソマグロは、そんな固定観念をぶっこわすサプライズだった。50から60、ノーマルレンズのデジカメでは撮りきれないほど大きな群団であった。トップで群団を率いるコロコロ太ったのが雌? まるでホンマグロのような迫力である。森田さんのブリーフィング通り、ここのイソマグロは大きくて堂々として威厳がある。 |
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![]() イソマグロ Gymnosarda unicolor |
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![]() ユウゼン Chaetedon daedalma |
□ 残酷なユウゼン玉 10数年前のことだか、ユウゼンブームで海水魚屋さんが熱くなったことがあった。ジャパネスクな友禅模様がフランスの好事家に受けて値があがり、八丈島の漁師が乱獲したとかしないとか話題になったのである。東京で海水魚屋を営むOさんの話だからかなりマジな話である。東京から1000キロの小笠原では、ユウゼンブームは起きなかったが、おかげでユウゼン目当てのダイバーも増えたという。 ユウゼンは日本の固有種である。昔、八丈島や三宅島を本拠地にしていたぼくには馴染みのチョウチョウウオである。もちろん小笠原のユウゼンは伊豆諸島よりも大型で、友禅模様も大胆にきまっている。自然のままの天敵の少ない環境のなせる技かもしれない。 4月から7月にかけて、ユウゼンが夏雲のような群れをつくりながら移動する。ユウゼンの生殖期間である。こちらではユウゼン玉と呼んで、映像ダイバーには恰好の被写体になっている。普段はペアを組んでウロウロしているのに、ユウゼン玉になるのは何故なのか聞いてみた。 森田さんの話では、子づくりに必要な栄養になるスズメダイの卵を集団で襲うから群れているそうである。卵を死守するススメダイの雄の逆襲は厳しいが群れにはかなわない。どこでどう学習したのか知らないが、残酷なユウゼンの子づくりを知って思わずうなってしまった。残念ながら今度のツアーでは見かけなかったが、ユウゼンカタギというチョウチョウウオとの混血(雑種)がいるのを、同じく森田さんから聞いた。 ユウゼンカタギとは面白い、正式な和名だとしたら名づけた学者はサプライズである。 □ ご当地の固有種・オビシメの話(ブダイ科) 日本の固有種であり、それも小笠原の海にしか見られないオビシメの話をしよう。ぼくのデジカメで撮ったのが、雌のオビシメである。東海大出版の『日本産魚類生態大図鑑』には「本種は最近(95年)小笠原諸島で発見、新種報告されたもの」とあるから10年前頃に同定された魚だと思う。学名(種小名)のローマ字に注目。 雄の写真はこのホームページ用に森田さんから提供されたものである。ぼくの写真では和名の意味が通らないが、森田さんの雄を見れば一目瞭然の魚である。 太った腹を真一文字にキリリと締めた帯びしめも勇ましい。 |
![]() 撮影シイナ ブダイ科/オビシメ(雌) Scarus obishime |
![]() オビシメ(雄) Scarus obishime 森田康弘さん提供 |
辞書にはオビシメという言葉はないがオビジメならある。 広辞苑の帯締め(おびじめ)の項には、帯が解けないように、帯の上に締める紐のこととある。 □ 小笠原が近くなる 来年の春、ぼくらが乗った小笠原丸は引退し、小笠原ゆきの超高速船テクノ・スーパーライナーが就航する。ウォータージェット型では世界でも最大級の客船である。 速力は38ノット(時速70キロ)小笠原丸の22ノットを凌駕するスピードである。26時間の船旅が17時間に短縮されるのである。 午後3時の竹芝桟橋を出航すると朝の8時には父島に入港できるから、その日、まるまる海を楽しめる。 □ ケータ列島のダイビングは7月から10月までベスト 水温の高い9月〜10月がアナ場ですとは森田さんの内緒話、台風をかわすのがトップシーズンのケータゆき極意だと言ってくれた。 台風を読むのは至難の技だが、来年の秋には高速船テクノスーパーに乗船してケータのマグロ穴に、再びチャレンジしてみたい。 □ 出航の銅鑼が鳴った 小笠原太鼓にかぶせるような古風な金属音である。 いつ来ても感動するのが、いってらっしゃい!行ってまいります!とかけあうお別れのコールである。けしてサヨナラをいわないのが小笠原流、更に旅情を増幅させてくれる。小笠原ロマンの終幕は、ダイビングボートが総出で小笠原丸を送りだす演出である。 小笠原丸のスピードにまけないように追いつき追い越し、それぞれのボートから、スタッフが海に飛び込んで手を振ってくれる。夢追いたちの荒々しい歓送の儀式である。 仲間たちは甲板から手を振りながら、いつまでも寄り添うようについてくる海追い人にエールを送っている。涙腺のゆるいぼくは、仲間から離れて青年のように深呼吸しながら目頭を熱くしている。 |
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| 海爺 2004-7-16 |